サイドキック
――――――――――――…
「ヒロ――」
「シー」
「………、」
ヒロヤの派手に改造された愛車を追ってから数十分。
奴が入り込んだ道をそのまま進んでいけば、辿り着いたのは初めて見る古びた倉庫だった。
長身の男を半ば見上げるようにして話し掛けようとしたが、そんな此方の言葉を遮った奴は形の良い唇に指を当てて私の台詞を封じ込める。
「なんなんだよ、ココ」
「雑魚雑魚」
「はあ?」
周囲には洩れないほどの小声で言葉を口にした私と、同じくらいの声音で返すヒロヤ。
眉根を寄せて奴に視線を合わせるも、目に入るのは派手に染色されたヘアーと無数のピアスたち。
暗闇に慣れてきた眼で漸くヒロヤの表情を認識できた頃には、奴はニヒルな笑みで口角を持ち上げていて。
「―――俺ら二人で潰してやろうぜ」
「またかよ……怒られ――…ってちょっと待てって!」
私の制止の声に全く耳を貸さない男は、勢い良く立ち上がると共に暗闇の中へ走り始めた。