サイドキック
「(…何回目だよ……)」
正直数えきれないほどの前例がある。
ヒロヤに誘われてツーリングに明け暮れたあとは決まって喧嘩でフィニッシュ。
「――――よぉ」
「!!誰だテメェッ」
そう、例えばレストランで予め決められているディナーコースのように。
ツーリングというメインを終えた私たちは、喧嘩というデザートを求めて闇に紛れる。
円を組むように地面へと腰を下ろしていた男たち。
その中の一人に標的を定めたらしいヒロヤは、男たちが手にする白い粉の入った袋を目にしてほくそ笑む。
「ビーンゴォ」
口笛混じりにそう声を上げたヒロヤ。
その声と振り上げたヒロヤの腕が合図となり、少し距離を隔てていた私もその渦中へと身を投じる。
「こ、こいつら―――"聖龍"のッ、」
私たちのことを噂か何かで耳にしていたらしい男の、か細い声音は直ぐに途絶えることになる。