サイドキック
――――――――――――…
―――コンコン
「ユウキです」
「おー、入れ」
大きな倉庫の二階に設けられた幹部部屋の最奥。
本来であれば現総長の昴さんや副総長の新《あらた》さんだけが入ることの出来る部屋の扉をノックした私は、中から掛けられた声に音無く息を呑みこんだ。
「―――、失礼します」
まさか一度でも、この部屋に足を踏み入れる瞬間が訪れるなんて。
パタン、と。背中越しに聞こえる扉が閉まる音を遠くのものに感じてしまう。
次第に早鐘を打っていく心臓を直に感じながら、おそるおそる視線を上げていくと。
「そんな強張ったカオすんな。まー、座れって」
「………、」
「黙り込んだお前見てると、なんか昔のこと思い出すんだよな」
OAチェアに腰掛けた昴さんは、尚も金色に染められた頭髪を揺らして柔に微笑みを浮かべる。
その向かいには同じタイプの椅子が置かれていて。
「―――……でも、それって、新さんのじゃ」
ないんですか、と。問い掛けの末端まで音にする前に目の前の男が声を上げて笑い出したものだから目を丸くした。