サイドキック
「………」
「あっはっはっはー、ははははは」
「す、ばるさん…!」
何もそんなに笑わなくても。
思わず顔を赤くして男の名を口にした私と、そんな此方の様子を切れ長の瞳で一瞥した昴さん。
その一瞬の行動に込められた言外のニュアンスに慌てて口を噤む。
暫しの沈黙を経由して、それから。
「―――…いや、悪い悪い。別に咎めてる訳じゃねぇんだ、寧ろ逆」
薄い笑みを浮かべてそう口にした男は、骨張った隻手で口許を覆うと言葉を続ける。
そんな昴さんの様子を、私は訳も分からず静観していた。
「そうやってお前は遠慮出来るだろ。ヒロヤだったらどうだ?しねーだろ、アイツは」
「――いや、でも」
「しねぇしねぇ。アイツは座れと言われれば座る、そんな奴だ」
そこで瞳を三日月に細めた昴さんは、口許で自らの指を絡めてから。
「ヒロヤだけじゃねぇ。此処に居る奴らは皆、俺や新に言われたことならその通りにするハズだ」