サイドキック







――――――――――――…






その日は、噂を聞き付けた連中の所為で朝から騒がしかった。

どうやらヒロヤもその内の一人だったらしく、


「ユウキ、おいユウキ!お前知ってるか!?」

「………何だようるせぇな」

「テンション低ッ!いいから聞けって!」





「あの昴さんが、今日からココに女連れてくるらし――」















今日も今日とて、派手な髪色に大量のピアス。

最早自身のトレードマークと化しているそれらを纏ったヒロヤが私に近付くと、直ぐに台詞を吐き出したのだけれど。



「皆、聞いてくれ」




奴が末端まで言葉を紡ぐ前に現れた昴さんと、―――その腕に腰を抱かれる、いつかの少女が視界の端に入り込んだ。












彼女は言わずもがな、昴さんの恋人である稜さんで。

そんな二人の姿を見た瞬間。あの日あの部屋で昴さんに言われた言葉が嫌というほど脳を駆け巡る。









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