サイドキック
―――"稜が先週、対立してる族に拉致されたんだ"
―――"俺はそこに一人で乗り込んで、感情に任せて敵を壊滅させちまった"
「………こいつは稜――――俺の、大事な女だ。ここに居るお前等にとっても守る対象にして欲しい」
―――"今までアイツには負担を掛け過ぎてたって改めて気付かされた"
―――"これからは、出来る限りアイツの為に色々してやりてぇと思ってる"
毎日のように一緒に過ごしてきた連中が、沈黙を守って見上げる先に居るのは勿論例の二人で。
そんな周りを一瞥してから私も視線を階段の上に持ち上げる。
「――――………、」
言葉にならないって、まさにこのことだ。
「すまねぇ……、よろしく頼む」
最後にそう口にした昴さんは少しも躊躇わずに、倉庫中の男たちに向けて頭を下げた。
そんな男を隣で苦渋の面持ちで見つめていた稜さんも、直ぐにそれに続く。