サイドキック
act.8
「信じらんねぇ」
「――ぐッ」
「なんで吐かねぇんだよ」
視界が霞む。
何度も打ち付けられた頭皮からは大量に出血しているらしく、ドクドクと感じる脈拍がやけにリアルだ。
「言うわけ、ねぇ、だろ………」
最早拘束された腕に力を込めることも出来ない。
今し方バットで殴られた頭部だけでは無く、身体の至る所がイッちまってる様な感覚。
「吐けば楽になるんだぜ?」
「―――カハッ…!」
「テメェの親玉についてちょーっと滑らしちまえばいいんだよ」
―――――"親玉"
その言葉を聞いて思い浮かべるのは、少し前までは間違いなく昴さんだった。
伝説の総長。
それは俺だけでは無く他の連中にも言えたことで、あの偉大な背中は絶対の憧れで。
でも今は――――、
「悪い、待たせた」