サイドキック
戦闘開始から僅か数分。
にも関わらず既に有利に立っているのはユウキとヒロヤのほうだった。
「(敵に回したくはねぇな)」
車内に広がる紫煙を細めた瞳で見詰めたまま、キーを回してエンジンを掛ける。
総長の言伝通りに負傷した男を病院へと連れて行くことが俺の役目だから。
「ま、心配ねぇだろ」
灰皿に擦り付けた煙草を冷めた瞳で見下ろしながら独白を零し、躊躇いなくアクセルを踏み込んだ。
彼
と
彼
女
の
強
さ
の
秘
密
「―――ま、こんなモンだろ」
「油断すんな」
「几帳面なんだよ、ユウキは」
ヒロヤの背後から振り上げた鉄パイプを構える男を目敏く見付けたユウキは、瞬時に脚へと力を込めると男の踝目掛けて薙ぎ払う。
「言わんこっちゃねぇ」
互いを陥れようとする輩は誰であろうと狩る。
意識せずとも築き上げた彼らの互いに寄せる信頼は、計り知れないほどに。