サイドキック
脳裏に浮かぶミルクティー色の髪の男を真っ先に殴り倒した。
脳内で、だけれど。
「あー、この間迎えに来てたヒトかぁ」
「とりあえずイケメンだったことは覚えてる」
「香弥ってば何だかんだ言って、め・ん・く・い」
語尾にハートマークでも付きそうな勢いでそう言葉を落としてくる彼女たちは何なのだろうか。
私は揶揄われているの?それともディスられてるの?寧ろ何なの?
"――――遅ぇ"
「………、」
"やっと出たと思えばシカトかよ、ふざけんなよシメるぞ"
「…………クソ野郎」
"あァ?"
誰のせいでこうなったと思ってるんだ!
思わず電話口に叫びそうになったものの、未だキャンパス内に居ることを思い出し何とか口を噤む。
にやにやとこの上なく表情を緩めて迫る友人三名をなんとか抑えてカフェテリアから飛び出した私は、尚も着信を知らせるスマホを乱暴に片耳に宛がった。
その瞬間、鼓膜に痺れを与えるオクターブ下の声音は不機嫌そのもので。
「用件を短くズバッと言え」
"……言ったらどうすんだよ"
「通話終了。即刻きる」