サイドキック
そんな私は彼女たちの言う"超絶イケメン"がどんなものかなんて、これっぽっちも気になっていなかったから。
「先行ってるよ」と声を掛け、門のところで待っていようと足を進め始めた。
―――だから、気付いていなかった。
「ユウキ」
「!!」
不意に鼓膜を叩いた低音と、掴まれた腕から伝わる熱。
ハッとして振り向いたときにはもう遅くて、視線の端で騒がれていた渦中の男が口角を上げて笑みを落とす。
このときも背後にアイツが居たことに気付かなかったなんて、自分の廃れ具合も甚だしい。
「な、んで居るんだよ!ヒロヤ!」
「遊びに行くって言っただろ」
「、………」
「忘れてたみたいだな」
そんな言葉を落とした奴に視線を合わせようと見上げてみる。
だがしかし、尚も何食わぬ顔でその場に佇む男は更に妖艶な笑みで口許を飾ると。
「遊びに行こうぜ、ユウキ」
"―――走りに行こうぜ"
いつかの台詞と重なるような言葉で、私を誘う。