サイドキック
「………嫌だ」
しかしながら私の口から飛び出したのは、そんな反抗的な一言で。
自らの腕を素早く反転させて拘束から逃れるものの、間髪を容れずに反対の腕で再度捕えられる。
それを余っ程吐き出したい溜め息を堪えて見詰めること、数秒。
「―――拒否すんなよ。傷付くだろ」
「そんな、ニヤニヤしたカオで言われても説得力もクソも無ぇんだよ」
「あ。バレた?」
「つーか」
本当は、言いたくなかった言葉だけれど仕方無い。
最大限に眉根を寄せて長身のオトコを睨み上げた私は、努めて無表情で言葉を落とす。
「ヒロヤ、お前は。俺がオンナだって知って面白がってるだけなんだろ」
―――――幾ら其れが、残酷な台詞だと知っていても
掴まれた腕、微動だにしない瞳の奥、落とされた沈黙。
私からは死んでも動いてやらない。
言外にそう匂わせることが出来たのかは定かでは無いけれど、暫くの黙然を経由して初めて口を開いたのは沢山のアクセサリーを纏う目の前の男だった。
「しょーがねぇな」