サイドキック
それを見た私はぎょっと眼を見開いて、顔をぶんぶん横に振って懸命に否定を示す。
しかしながら彼女らには1ミリたりとも伝わってなどいないらしく、爛爛と瞳を輝かせた友人たちはグッと親指を突き立ててエールを送ってきていて。
余っ程頭を抱えたい思いでそれを見ていた私は、ヒロヤの言葉で更に突き落とされることになる。
「あー…、メット無ぇんだわ。俺のでいい?」
「………何だって?」
「だから、メット。ユウキなら後ろでも一人で乗れるだろ」
「ちょっと待て、待てよ」
ぐいぐい肩を引かれて連れて来られたのは、キャンパス内に設けられた駐車スペースで。
目の前には見覚えのある派手なバイクが一台。
それを冷や汗だらだらの心境で数秒見詰め、堂々と此方の肩を抱く男を見上げた。
「って、近い近い近い!何なんだよお前、心臓に悪いって言ってるだろ!!」
「言ってるだろって、初めて言ったじゃねぇかそれ」
「やめろってマジで!つーかテメェのケツになんか乗らねぇからな!ふざけんなって!」
「ふーん」
妖艶に切れ長の瞳を細めたヒロヤに、募るのは嫌な予感のみ。