サイドキック
「ファミレスんときから思ってたんだけどさ」
「な、なんだよ」
「ユウキって」
そこでグッと距離を詰めた男は笑みをひとつ零すと。
「オトコに対する免疫、無さすぎじゃねぇ?」
信じ難いほどの至近距離で、そんな台詞を口にしたものだから驚いた。
互いの息遣いまで分かるようなキョリ。
思わず息を詰めて視線を泳がせた。心臓に、悪すぎる。
どこどこ音を立てて鼓動するそれは甚だしいと言わざるを得ないほどで、思わずヒロヤに聞こえているんじゃないかと疑ってしまった。
――――と、そのとき。
「……まぁ、あんときは俺もお前を男だと思ってたしな」
「、」
「先入観もあったんだろ。まさか女だとは思いもしなかったし」
視線を泳がせた私を見たヒロヤが、どんな表情で触れていた肌を離したのかなんて知らなかった。
ヒロヤが離れたことで漸く落ち着いた自身の心音に安堵していただけで。
奴の面持ちがどんなものかなんて予想すら持たなかった私は、人気の無いこの場所に物凄く感謝していた。
何故なら、
「こッのクソ野郎が!!!」
「――――てッ、!」
人目を憚らず奴に仕返しが出来るから。