サイドキック
自らの膝を抱えるようにして腰を折っているヒロヤと、腕組みをしてそれを仁王立ちで見下ろす私。
向こうに停められている派手に装飾されたバイクはこのキャンパス内には似付かわしく無い。
柔に頬を撫でる風が互いの髪を掬って、攫っていく。
尚も眉根を寄せて視線を向ける私を見上げて苦笑したヒロヤは、少しの沈黙を経由してから徐に口を開いていく。
―――…その直前に奴が見せた苦々しさを押し留めるような表情は、酷く意外だった。
「俺はまー、引退してからもユウキと会おうと思ってたんだけどよ。ちっとばかし忙しかったんだわ」
「別に聞いてねぇよ」
「………相変わらずお前は冷酷マシーンなのか」
「違う。そうじゃねぇ」
噛み合わない会話に段々と苛立たしさばかりが募っていく。
そうじゃない。そうじゃないだろ、どうして伝わらない。
「お前を親友だと言えるくらい信頼してたし、それは今でも変わらない。でもそれは"聖龍"っていう存在があったからだ」
――――――俺はそれを、壊したくない