サイドキック
豪勢にあしらわれた螺旋階段を二人で上り、奥まった部屋の扉を開けると直ぐに彼女をソファーに座らせた。
そして大きな部屋の一角に位置するキッチンへと向かい、外国産の茶葉を使用して紅茶を淹れる。
「お母さん、ほら。これ飲んで落ち着いて」
「香弥ちゃん……」
「私なら大丈夫だから。今までずっと自由にさせて貰ったんだから親孝行くらいさせてよ」
「――お見合いの相手の写真、届いたんでしょ?」
核心をついたのは私。
躊躇いながらも言葉を音に乗せきれば、正面でティーカップを握る彼女の肩が大幅に揺れた。
「知ってたの…?」
「……薄々はね。お母さんの様子がおかしいのにも気付いていたし、何より」
「――お父さんの機嫌が凄くいいみたいだから」
ティーカップを見下ろしながら口にした自らの台詞に反吐が出そうだった。
お父さん、なんて。生まれてから一度も思ったことも無ければ、思いたくもない。