サイドキック







要らぬ言葉を洩らした自分の口を慌てて片手で押さえ込む。

だがしかしそんな行動も奴にとっては無意味なものに過ぎなかったらしく、にやりと意味有り気に口角を持ち上げたものだから此方の眉根が寄る。




「か、香弥………」









隣で若干顔を青くして私を見る友人は、奴の存在に気が付いたらしく。

そんな彼女はきっと今日この場に私が居ることに責任を感じているのだろう。

彼女に向かって「違う、大丈夫だから」と小声で耳打ちしたあと、私は一息吐き出して―――選りにも選って真向いに腰を下ろした男を眼光鋭く睨み付けた。



「(き・か・ね・ぇ)」








そんな私を嘲笑うように口の動きだけでそんなメッセージを送ってきた奴に余程舌打ちをしたい気分だった。

その代わりに更に睨む力を強めれば、奴の隣に腰かけた人がぶるっと身震いしていて慌てて視線を逸らす。










「(――――ヒロヤのクソったれ、)」







なんでお前がこんなところに居るんだよ。








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