サイドキック
―――――――――――…
「で、」
腕組みをして眼前に佇む長身の男を見上げた―――否、睨んだ。
連れて来られた場所は店内の開けたスペースで。
近くにあるトイレに向かおうとする客が私たちの徒ならぬ雰囲気にちらちらと視線を送ってきている気もするけれど。今は正直、関係無い。
「ヒロヤ。なんでお前が居るんだよ」
「それはこっちのセリフ。なんでユウキが合コンなんか来てんだよ」
「故意じゃねぇ。こんなんだって知ってたら来るワケねぇだろ」
「それは俺も同じだっての」
――――はぁ?
思わず呆気にとられて瞬きを数回繰り返した。
冗談だと思った。今までの行動から判断すれば、コイツは自ら率先して合コンに来るような男だったから。
しかしながら尚も真剣な表情で私を見下ろす奴は、一気に眉根を寄せてこう洩らす。
「ダチにお前が来るって聞いたんだよ。でなけりゃこんな面倒なトコ来るわけねぇだろ」
――――よく言うよ、
無意識の内に冷たい眼差しでヒロヤへ嘲笑を向けていた私は、奥底に潜む自分の感情には全く自覚が無くて。
どす黒い感情が渦巻く。
脳裏を掠めるのは先程のヒロヤの視線。私以外の女子に向けられた、好奇な視線。