サイドキック
「お前はそうやって―――」
そこまで紡いで我に返った私は、慌てて自らの言葉を引っ込めて口を噤んだ。
今、なにを、言おうとした?
と、そのとき。
「―――お前はそうやって、なに?」
「……ッ、」
トン、と壁に突き立てられた見覚えのあるその腕。
まるで囲われるようにして視線を落とされる。余裕たっぷりに笑みを浮かべた男は壁際まで私を追い込むと、満足げに口許へと弧を描いた。
「ユウキ」
「、」
「続きは?」
耳元で甘美な声音が囁かれる。
ぞくぞくと痺れる耳朶。初めて感じるそれに顔を顰めて視線を逸らすと、頭上に落とされたクツリとした笑みが私の神経を逆撫でした。
「(もうホンットに、)」
苛ついてしょうが無い。ここで実力行使に出たら其れこそ私の負けに思えて、挑むような視線をこの男に向けるだけで。
―――こんなチャラ男に好いように扱われているなんて、不快で不快で仕方が無い。