見えない世界でみつけたもの
 静と一緒に学校までの道のりは危険な場所も少なくはない。

 見えている人にとっては問題ない道でも、見えない俺には恐怖なのだ。
 
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」

 一歩、一歩、慎重に歩く俺の横から聞き慣れた声が聞こえてくる。そして、これまた聞き慣れた息遣いが耳元をくすぐっていく。

 必ず俺の横で静は俺の様子を見ている。

 見えないが、静の息遣い、歩く靴音、いつもの静がそこにいる。

 それだけで俺は幸せだと思う。

 本当に静は”俺の眼”を本当に良くやってくれていると思う。

 俺が一人で学校に行けるようになればいいのだが、外を一人で歩くのは正直怖いところがある。だけど、いつまでもそんな事を言っていられないのは分かっているし、早く一人でも出来る事を増やしていかなければいけない。

 決して静と一緒にいるのが嫌なわけではない。だが、時々静が無理をしているのが分かるので、それだけは辛い。

 見えない目が、あの日の光景を映し出す。

 もう過去の事だ……忘れようと思っても忘れられない。
< 5 / 18 >

この作品をシェア

pagetop