君が幸せなら、それでいい。
「よっ!優!」

教室に入れば、葵は嬉しそうに話しかけてくる。

「誘っといたよ。凛。」

「まじか!やっぱ出来る男は違うな!」

「何いってんの?」

それほどまでに嬉しかったのか、葵は嬉しさを堪えきれず尻尾を振っている子犬のように、じたばたしだした。
いつか本当に尻尾が生えてきそうだ。

「落ち着きなって。」

僕がかけた声もまるで聞こえていない。
葵がこんなに楽しみにしてくれているのはいいが、はたして瀬谷さんは肝試しに行けるだろうか。
ここで瀬谷さんが行けないとなると、また1から選ばなくてはならない。
そうなるとやっぱりめんどくさい。

「なあ、そういえば瀬谷さんは大丈夫なのか?」

僕の頭の中を見抜いたかのように葵が聞いてきた。

「僕も考えてたとこ。行けないとなるといろいろめんどくさいよね。」

「だよなー。でもいけないって顔じゃなくね?」

「どこを見て想像してるの。」

人を見た目で判断してはいけないと思う。どんなに可愛い子も、苦手なことのひとつくらいはあるだろうし、誰だってトラウマくらい持っているはずだ。でも、僕でもなんだか瀬谷さんは大丈夫な気がしてしまった。


僕らが話していると、丁度凛と瀬谷さんも話しかけてきた。

「立花くん!張谷!肝試しだって!?いくいく!」

瀬谷さんは予想を裏切らず、笑顔でOKしてくれる。

「おはよ瀬谷、ってなんで俺だけ呼び捨てなんだよ!!」

「だってなんか呼びたくなる顔してんだもん。」

「それいじめじゃない!?」
2人の会話に僕と凛はくすくすと笑った。
2人は僕らを見ると声を合わせて文句を言ってくる。
それすらも面白くて、僕は声を出して笑ってしまった。
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