君が幸せなら、それでいい。
改札に着くと、凛は僕を見つけた瞬間にこっちへ走ってきた。

「もー!遅いよー!」

「遅いって言ってもまだ10時20分だよ?」

凛が隣でじたばたと地面をける。
ほっぺを膨らませて、私は怒っています、と言わんばかりの顔だ。

「分かった分かった!ごめんね。」

仕方なく僕が謝ると、凛は途端に笑顔に変わる。表情筋どうなってるんだか。
とりあえず、凛の機嫌が戻り一安心だ。


「それで、どこに行くの?」

僕の質問に凛は顔を近づけてきた。

「な、なに!?」

僕は驚いて凛から1歩離れる。
何故か胸が高鳴って、心臓の音が僕の耳に響く。
…これはきっと驚いただけだ。

「それ!そのシャキッとしない顔を叩き治してやる!」

「あの、言ってることが…」

「てことで、遊園地へ行こー!」

頭の整理がつかないまま、僕の手を取り走り出す凛。
もう少しで閉まりそうな電車に乗ると、間に合ったね、と僕に向かって満面の笑みを見せる。
そのまま僕達は空いていた席に座った。


隣にいる凛はもう船をこいでいて、眠そうだ。本当にコロコロと表情の変わるヤツだ。
凛のほっぺにそっと触れてみる。柔らかくてサラサラだ。黙ってれば可愛いのに、なんて思いながら僕も目を閉じた。
朝からいろいろと忙しくて疲れたし、少し目を閉じるくらいいいだろう。

真っ暗な視界の中でさっきのことを思い出す。咄嗟に手を掴まれた時だって、ドキッとした。掴まれた手が熱くなった。
今日の僕はどこか変だ。風邪でもひいたんだろうか。
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