君が幸せなら、それでいい。
教室に入って自分の席に着くと、すぐに葵が話しかけてきた。葵はクラスの中でよく一緒につるむ友達で、僕とは違い友好関係も幅広い。
僕が狭く、深く、という関係を築くとしたら、葵は広く、深く、という感じだ。
「はよっ、優!」
「おはよ、葵。」
葵は僕の前の席に腰を下ろすと、面白い話があるんだ、と言ってきた。
「面白い話って?」
リュックから教科書を机に移しながら、言葉を返す。
「それが、近頃出るらしいんだ。」
「何が出るの?」
出る、という言葉の意味がわからず、疑問を返す。
「おばけだよ。お、ば、け!」
ドヤ顔をしてくる葵に苦笑いを返して、僕はスマホをいじり出す。
「おいおい、これから面白くなるんだって!」
「おばけとか、現実味のないものって信じられないんだよね。」
「これだから優は!ちょっと聞いてって!」
「はいはい、聞くってば。」
どうしても、と手まで握ってきた葵に渋々従い、スマホを机の上に置く。
葵は満足そうに笑うと、さっきの倍ほど顔を近づけてきた。
「俺達の高校の近くにさ、阿妻山(あつまざん)ってあるだろ?斜面が急だからってあんま人がよらない山!あの麓にさ、阿妻第二川ってのが流れてるらしいんだよ。そこで出るんだって!」
「幽霊が?」
「そうそう!夜な夜な女の子が歩いてるんだって!なんでも、お父さんを探してるとかなんとか。」
「なんで探してるの?」
「お父さんに、捨てられたかららしい。迎えに来るのをずっと待ってるって。」
「へえ。」
「なんだ、面白くないか?」
「いや、なんかさ、信ぴょう性に欠ける話だなあって。」
僕がこう思ったのにはちゃんと理由がある。
この学校に1ヶ月も通っていて1度もそんな噂は聞いたことがなかったし、第一この町に住んでいるのに耳にしたこともなかった。
根拠がないから幽霊は盛り上がる気もするが、やはりあまり乗り気にはならない。
「まあ、確かに優にとってはあんまりだったかもなあ。こういうの興味無さそうだし。」
はあ、とため息をつく葵。なんだか申し訳なくなった僕は仕方なくある提案をした。
「分かったよ。気になるんでしょ?肝試し付き合ってあげる。」
「まじっ!?やったあ!!」
僕の提案がよほど嬉しかったのか、勢いよく席を立ち上がる。ガタン、と大きく響いて倒れたイスに、クラス全員が僕達の方を振り向いた。
小さな笑い声が教室に響き、僕は頭を抱えた。
葵はと言うと、隣でケラケラと周りを見渡しながら笑っている。
ああ、付き合うなんて言うんじゃなかった、と僕は直観的に感じた。
僕が狭く、深く、という関係を築くとしたら、葵は広く、深く、という感じだ。
「はよっ、優!」
「おはよ、葵。」
葵は僕の前の席に腰を下ろすと、面白い話があるんだ、と言ってきた。
「面白い話って?」
リュックから教科書を机に移しながら、言葉を返す。
「それが、近頃出るらしいんだ。」
「何が出るの?」
出る、という言葉の意味がわからず、疑問を返す。
「おばけだよ。お、ば、け!」
ドヤ顔をしてくる葵に苦笑いを返して、僕はスマホをいじり出す。
「おいおい、これから面白くなるんだって!」
「おばけとか、現実味のないものって信じられないんだよね。」
「これだから優は!ちょっと聞いてって!」
「はいはい、聞くってば。」
どうしても、と手まで握ってきた葵に渋々従い、スマホを机の上に置く。
葵は満足そうに笑うと、さっきの倍ほど顔を近づけてきた。
「俺達の高校の近くにさ、阿妻山(あつまざん)ってあるだろ?斜面が急だからってあんま人がよらない山!あの麓にさ、阿妻第二川ってのが流れてるらしいんだよ。そこで出るんだって!」
「幽霊が?」
「そうそう!夜な夜な女の子が歩いてるんだって!なんでも、お父さんを探してるとかなんとか。」
「なんで探してるの?」
「お父さんに、捨てられたかららしい。迎えに来るのをずっと待ってるって。」
「へえ。」
「なんだ、面白くないか?」
「いや、なんかさ、信ぴょう性に欠ける話だなあって。」
僕がこう思ったのにはちゃんと理由がある。
この学校に1ヶ月も通っていて1度もそんな噂は聞いたことがなかったし、第一この町に住んでいるのに耳にしたこともなかった。
根拠がないから幽霊は盛り上がる気もするが、やはりあまり乗り気にはならない。
「まあ、確かに優にとってはあんまりだったかもなあ。こういうの興味無さそうだし。」
はあ、とため息をつく葵。なんだか申し訳なくなった僕は仕方なくある提案をした。
「分かったよ。気になるんでしょ?肝試し付き合ってあげる。」
「まじっ!?やったあ!!」
僕の提案がよほど嬉しかったのか、勢いよく席を立ち上がる。ガタン、と大きく響いて倒れたイスに、クラス全員が僕達の方を振り向いた。
小さな笑い声が教室に響き、僕は頭を抱えた。
葵はと言うと、隣でケラケラと周りを見渡しながら笑っている。
ああ、付き合うなんて言うんじゃなかった、と僕は直観的に感じた。