君が幸せなら、それでいい。
帰り道、凛から少し寄り道していこう、とお誘いを受けた。
特に用事もなかった僕はその寄り道に付き合うことにした。

「あのね、最近発売したアイス食べに行きたいの!」

「またアイスかー。」

凛はアイスが大好きだ。
暇さえあればアイスを食べているように見える。

「キャラメルレモンホットドッグ味!」

「え、何それ美味しいの…。」

デザートもご飯もお構い無しに混ざっているそのアイスに、僕は少し寒気を感じる。

「り、凛だけ食べていいよ。僕は遠慮しとく。」

「だめだめ!付き合ってくれたお礼に奢ってあげる!」

僕の手を無理やり引っ張り出す凛に、これは逃げられないと思い、歯を食いしばって覚悟を決める。こうなってしまったら何をしても凛を止めることはできない。
アイス屋さんの前に来ても、もう少しで注文するところまで来ても、僕のアイスへの恐怖は全く拭えなかった。

「キャラメルレモンホットドッグ味、二つください!レギュラーで!!」

凛が元気よく注文するもんだから、店員さんも困り笑顔だ。
それに全く売れていないのか、キャラメルレモンホットドッグ味のアイスは、ほかのアイスよりも完全に量が減っていない。
やっぱり人気はないのだろう。

「はい、優ちゃん!」

凛が渡してきたアイスを受け取って、近くの席に座る。
僕は不気味な色のアイスをじっと見つめた。
キャラメルの茶色にレモンの黄色、そしてもうひとつはホットドッグなのだろうか…赤と紫が混ざりあったような色をしている。

「先に食べてみていいよ!優ちゃん!」

「いや、そこは凛が…」

「いーのいーの!!」

全く悪気の感じない笑顔だが僕から見たらもはや悪魔にしか見えない。凛にとってはこれは立派な優しさなのだろう。
僕は何もかも捨てる覚悟で、アイスを口に放り込んだ。
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