自称プレイボーイと絡まる私
書庫の中は静かで、紙類を整頓する音と海野くんがでたらめに使うはたきの音しかしない。
外からどこかの部活の掛け声が窓ガラス越しに聞こえた。
外は見るからに寒そうで、だけどストーブのついた書庫の中はほんのりあったかい。
「海野くんはさー」
「うん?」
「…なんで来るもの拒まずなの?」
ぽろっと口から出た。
なんとなく聞いてみた、
ただそれだけだった。
どうせまた適当なことしかいわないんだろう。
そう思ってちらりと彼の顔を窺って思わず息をのんだ。
海野君が、
なんだか今にも泣きだしそうな顔をしていたから。
どうしてそんな顔してるの、
どうしたの
何か言ってはいけないことだった?
こんな言葉が頭で浮かんでは喉に詰まって消えた。
「あ、」
「なんでだろうねえ、俺ほんとアホだよね」
何か言おうとした私の言葉を遮った海野君の言葉は少し揺れているような気がした。
「…アホって自覚あったの?」
「菅原さんにあんまりにもアホアホって言われてきたからね?さすがにそうなのかなって思ってきたよ」
動揺したまま返した言葉に海野君は笑って、いつものように軽口を叩いた。
それから私たちは先生が戻ってくるまでそれなりに作業を進めた。
時々他愛もないことで騒ぎながら、くだらないおしゃべりをしながら。
だけどその間中、私の頭から泣きそうな海野君の顔が離れることはなかった。