自称プレイボーイと絡まる私
「俺、もう長くないって言ったらどうする?」
海野君はいつもこうやって人に受け取り方を託すような言い方をする。
聞いた人が冗談だろうと言えば冗談だよと言って、
本当なのかと問えばさあどうでしょう、とずるい返し方をする。
今回の冗談はタチが悪い。
何か言って悪態をついてやりたかったけど上手く声が出ない。
かわりに海野君の胸を手で叩いた。
何度も、叩いた。
冗談でしょ、やめてよって
笑い飛ばせるような顔じゃない。
眉間にギュッと皺を寄せて、目を真っ赤にして瞬きを我慢するみたいに力を入れたその顔は
”冗談なんかじゃない”と物語っていて。
どうしようもできない、
そんな諦めが薄くにじんでいて。
「泣かないでよ菅原さん」
「…無茶言うな」
困ったような顔の海野君はそろりと私の頬に指をすべらせた。
ひんやりした手が濡れた頬に気持ちいい。
「やっとわかったのになあ…」
ため息をつくみたいに小さな声で言った言葉に聞き返すと、
海野君はじっと私を見つめた。