諸々ファンタジー5作品
戦人
戦火……巻き込んだのは、彼。そして、ワタシ。準備された物語。
願ったのは、ほんの少しの幸せ。ロスト、あなたも……同じだった?
『忠誠』
ロストの足は、城に向いていた。
その歩みは、確実に、走ることもなく。未来を予告するかのように。
時間の流れは、ゆっくり、確実に進んでいく。
城の門は、大きく立ちはだかるかのように見える。
しかし、ロストには確信があった。門番は、ロストに尋ねる。
「名は?」
「……ロスト。」
彼の声は、人知の及ばぬ声音。門番は、何を思っただろうか?
きっと、後に思い出す。預言者の声だったと……
「入れ!」
ワタシは疑問に思う。
だって、彼は話したことがなかった。
門番はロストの名を尋ね、耳で聞き、確認して城へと入れた。紙に名を書いたロストではなく……
“彼”も、確信があったのだろう。自分の行為が、きっと声になると。
ロストは、ワタシの近くに来た。その距離は、心は……
今は、ワタシの知らないこと。
ロスト、知って欲しい。あなたの願うのが、死だとしても……あなたを愛した女がいたことを。
この心は、あなたのために、命も懸けるの。愛しているわ。愛玩の舞姫に喜んでなる。それ程なのよ……
「よく来たね、ロスト。願いは何かな?王として、君の願いを叶えてあげよう。」
ロストが行き着いたのは、王の目の前。
王座に座すカイディールは、ニヤニヤと不敵な笑みをしていた。
「王よ。あなたこそ、何を望みますか?」
彼の声に驚いたのは、その光景を見守っていた者たちすべて。
「約束は、覚えているか?」
「約束をした覚えがありません。」
「ふっ。俺に逆らうのか?」
「王よ、あなたは知っている。私が望むものを……」
「だから、君から大切なモノを預かることにしたんだ。」
沈黙が重く、その部屋を包むほどの緊張。時間の流れが、とても長く感じる一瞬。
「ロスト。忠誠を、誓ってほしい。人質と引き換えの忠誠。『舞姫』と対等の……それが、俺の心の支え。」
「誓いましょう。“彼女の為”だと……引き換えの忠誠。あなたに、この知識すべてを捧げます。一生を……」
「……そう、一生。俺の命の限り……」
彼は、預言者ではない。
望みは命を絶つこと。それを、カイディールは知っていた。
「王よ、一つだけ条件を。」
「何だ?」
「……戦に、参加します。」
「…………。ロスト、お前は……いや、いい。俺が、一番よく知っている。では、こちらも条件を。」
部屋に通されたのは、年齢の近い戦士。
「王よ、それは!」
「条件だ。知っているから……聞いてくれ。大国は、お前の存在を調べ始めた。俺が知りえた情報。すぐに、手に入れるだろう。一つの未来のために……」
王は、若い戦士をロストの横に立たせた。
「セイラッド。今日から、お前の主だ。」
「俺は、誰の下僕でもない。自分のために生きる。」
強い目の輝きを持った青年。
「だから、ロストにふさわしい。ロスト、生きろ……願え。小さな幸せ……それは、とても貴重だ。俺が欲しいのは、それだけ。その一つ、そのために……」
「王よ、ブレシニーをブラウンドに返せ。俺は、忠誠を誓った。」
「無理だ。会わせることは出来るが、返せない。ブラウンドからも、理解を得るだろう。自分の存在の大きさ、ロスト……君が……いや、俺が追い込んだ。」
「王よ、事態の緊迫が城を包んでおります。何事……戦火の匂い。敵は、大国タイドフ。急な戴冠式……」
ロストは、口を閉ざし周りを見渡した。
「自信を持て。ここには、お前の言葉を待つ者たちだけ。希望の光……預言者よ。その知識は、どこへ導く?」
「分からない。望みは、行く道を見えなくする。盲目……」
静かな時間。
部屋の者たちの中には、平安があった。一時でも、大切の者との時間を願って……
王は、ロストを案内するようにセイラッドを促す。
部屋を出たところで、ロストは王妃に出逢った。
「ロスト、戦に出るって……」
「カイディールは、良い奴だよ。心配は、いらない。ブレシニーを支えてやって欲しい。」
「会って行かないの?」
「……一生、会わない方が良い。ごめんと、伝えて……」
ロストの心は、見えない。
カイディールが望んだのは、王妃ミラ二ーとの幸せな時間だった。
ロストの望んだものが、同じように幸せな時間だったのか……ワタシは知らない。
ただ、想いは尊く……時間は待ってくれない。
大国の情勢が揺れる。その波紋が津波となって、小さな国ミャーダを呑み込み始めていた。
願うのは、身近な者との幸せな時間…………
願ったのは、ほんの少しの幸せ。ロスト、あなたも……同じだった?
『忠誠』
ロストの足は、城に向いていた。
その歩みは、確実に、走ることもなく。未来を予告するかのように。
時間の流れは、ゆっくり、確実に進んでいく。
城の門は、大きく立ちはだかるかのように見える。
しかし、ロストには確信があった。門番は、ロストに尋ねる。
「名は?」
「……ロスト。」
彼の声は、人知の及ばぬ声音。門番は、何を思っただろうか?
きっと、後に思い出す。預言者の声だったと……
「入れ!」
ワタシは疑問に思う。
だって、彼は話したことがなかった。
門番はロストの名を尋ね、耳で聞き、確認して城へと入れた。紙に名を書いたロストではなく……
“彼”も、確信があったのだろう。自分の行為が、きっと声になると。
ロストは、ワタシの近くに来た。その距離は、心は……
今は、ワタシの知らないこと。
ロスト、知って欲しい。あなたの願うのが、死だとしても……あなたを愛した女がいたことを。
この心は、あなたのために、命も懸けるの。愛しているわ。愛玩の舞姫に喜んでなる。それ程なのよ……
「よく来たね、ロスト。願いは何かな?王として、君の願いを叶えてあげよう。」
ロストが行き着いたのは、王の目の前。
王座に座すカイディールは、ニヤニヤと不敵な笑みをしていた。
「王よ。あなたこそ、何を望みますか?」
彼の声に驚いたのは、その光景を見守っていた者たちすべて。
「約束は、覚えているか?」
「約束をした覚えがありません。」
「ふっ。俺に逆らうのか?」
「王よ、あなたは知っている。私が望むものを……」
「だから、君から大切なモノを預かることにしたんだ。」
沈黙が重く、その部屋を包むほどの緊張。時間の流れが、とても長く感じる一瞬。
「ロスト。忠誠を、誓ってほしい。人質と引き換えの忠誠。『舞姫』と対等の……それが、俺の心の支え。」
「誓いましょう。“彼女の為”だと……引き換えの忠誠。あなたに、この知識すべてを捧げます。一生を……」
「……そう、一生。俺の命の限り……」
彼は、預言者ではない。
望みは命を絶つこと。それを、カイディールは知っていた。
「王よ、一つだけ条件を。」
「何だ?」
「……戦に、参加します。」
「…………。ロスト、お前は……いや、いい。俺が、一番よく知っている。では、こちらも条件を。」
部屋に通されたのは、年齢の近い戦士。
「王よ、それは!」
「条件だ。知っているから……聞いてくれ。大国は、お前の存在を調べ始めた。俺が知りえた情報。すぐに、手に入れるだろう。一つの未来のために……」
王は、若い戦士をロストの横に立たせた。
「セイラッド。今日から、お前の主だ。」
「俺は、誰の下僕でもない。自分のために生きる。」
強い目の輝きを持った青年。
「だから、ロストにふさわしい。ロスト、生きろ……願え。小さな幸せ……それは、とても貴重だ。俺が欲しいのは、それだけ。その一つ、そのために……」
「王よ、ブレシニーをブラウンドに返せ。俺は、忠誠を誓った。」
「無理だ。会わせることは出来るが、返せない。ブラウンドからも、理解を得るだろう。自分の存在の大きさ、ロスト……君が……いや、俺が追い込んだ。」
「王よ、事態の緊迫が城を包んでおります。何事……戦火の匂い。敵は、大国タイドフ。急な戴冠式……」
ロストは、口を閉ざし周りを見渡した。
「自信を持て。ここには、お前の言葉を待つ者たちだけ。希望の光……預言者よ。その知識は、どこへ導く?」
「分からない。望みは、行く道を見えなくする。盲目……」
静かな時間。
部屋の者たちの中には、平安があった。一時でも、大切の者との時間を願って……
王は、ロストを案内するようにセイラッドを促す。
部屋を出たところで、ロストは王妃に出逢った。
「ロスト、戦に出るって……」
「カイディールは、良い奴だよ。心配は、いらない。ブレシニーを支えてやって欲しい。」
「会って行かないの?」
「……一生、会わない方が良い。ごめんと、伝えて……」
ロストの心は、見えない。
カイディールが望んだのは、王妃ミラ二ーとの幸せな時間だった。
ロストの望んだものが、同じように幸せな時間だったのか……ワタシは知らない。
ただ、想いは尊く……時間は待ってくれない。
大国の情勢が揺れる。その波紋が津波となって、小さな国ミャーダを呑み込み始めていた。
願うのは、身近な者との幸せな時間…………