諸々ファンタジー5作品
『波紋』
ロストは、城の中を巡る。
一番興味があったのは、食糧庫。戦には必要。そして医療施設に武器庫……
「お前、暗い。」
セイラッドの冷たい声にも、ロストは反応しない。
「けっ!お前の声、心地よすぎて逆に違和感。」
ロストはセイラッドの言う人の感覚に興味を持った。
「……声は、使うほど変化する。俺は、長い時間 声帯を使っていない。」
「……ロスト、死を願うのか?」
セイラッドの眼は、何かを探るようだった。
「誰にも言うな。俺の言葉は、戦場に身があって効果を増すんだ。」
「難しいことは分からない。誰かのために生きる想いを、知ることが出来るだろうか?」
「知らなくていい。相手のために、生きることを願え。」
「……お前が望まないのに、説得力がないんじゃね?」
「ふっ。そうだね……」
二人は、これから戦果に凱旋を共にする。しかし、見ている未来は……同じではない。
「誰かのために命を懸けるより、相手のために生きろ。」
ロストは後に願う。
セイラッドが、約束を守ることを。セイラッドを喪いたくない為に。
ロストの思いは一つ。死ぬ時は独り。
カイディールが、ブレシニーの命と身の保障を誓ったのを信じ。
彼の知識には目的があった……復讐……
シアワセではなく赤い血のような……オモイ。
ロストは波紋を知る。
そして、願う……ただ、ブレシニーの未来を護りたいと。
一人を選ぶなら、ブレシニーだけ。ブラウンドの願いでもあった。
『誓ってくれロスト、憎んでもいい。ただ、ブレシニーだけは護って欲しい。』
彼は誓いを守る。命を捨てても。
「セイラッド、訊いても良いか?」
「何でも、俺の主。」
セイラッドの目には鋭い輝き。生きてきた世界を物語る。
「波紋は、どこまで?」
「どこまで……か。何も見てこなかったのか?それとも、見ようとしなかった?」
彼は見なかったわけじゃない。見ようとしなかったのは事実。
彼は自分の命に執着がない。ただ、知識に貪欲で……
セイラッドは苦笑。
「黙るなよ、俺が悪者か?」
「セイラッド……俺の見たモノは、俺の願い。だろ?」
「……ロスト、願え。せめて、少しの命を……出逢いを否定しないでくれ。」
「願う。ほんの少しの命……彼女のために。」
「舞姫は、お前の恋人か?妻なのか?」
「幼なじみ。ただ、一言でいうなら……命の支え。」
外の見える広い空間に二人で並ぶ。
「この小さな世界。ロスト、何が見える?」
「俺が過去に見た色が見える。常に願ってきたのは幸せ。ほんの少しでも長く……ここで生きることを願う人々。」
「タイドフが揺れる。欲したものを失い、手さぐりの平穏。その失ったと思った安定が……“ここにある”。」
「セイラッド……君なら、どうした?」
「知らないよ。俺は君じゃない。俺は、その答えが欲しいんだ。……匂いがする?不審者だ!」
セイラッドは、腰にある笛で合図を送る。
「ロスト、身を低く!」
【ヒュッ】軽い矢の音。
二人の間を通り抜け、壁に刺さったその矢には、文が付いていた。
『手に入れる』赤黒い血文字
この時、ロストは知っていたのかもしれない。
身近な人間に、裏切り者がいるのだと…………
ロストは、城の中を巡る。
一番興味があったのは、食糧庫。戦には必要。そして医療施設に武器庫……
「お前、暗い。」
セイラッドの冷たい声にも、ロストは反応しない。
「けっ!お前の声、心地よすぎて逆に違和感。」
ロストはセイラッドの言う人の感覚に興味を持った。
「……声は、使うほど変化する。俺は、長い時間 声帯を使っていない。」
「……ロスト、死を願うのか?」
セイラッドの眼は、何かを探るようだった。
「誰にも言うな。俺の言葉は、戦場に身があって効果を増すんだ。」
「難しいことは分からない。誰かのために生きる想いを、知ることが出来るだろうか?」
「知らなくていい。相手のために、生きることを願え。」
「……お前が望まないのに、説得力がないんじゃね?」
「ふっ。そうだね……」
二人は、これから戦果に凱旋を共にする。しかし、見ている未来は……同じではない。
「誰かのために命を懸けるより、相手のために生きろ。」
ロストは後に願う。
セイラッドが、約束を守ることを。セイラッドを喪いたくない為に。
ロストの思いは一つ。死ぬ時は独り。
カイディールが、ブレシニーの命と身の保障を誓ったのを信じ。
彼の知識には目的があった……復讐……
シアワセではなく赤い血のような……オモイ。
ロストは波紋を知る。
そして、願う……ただ、ブレシニーの未来を護りたいと。
一人を選ぶなら、ブレシニーだけ。ブラウンドの願いでもあった。
『誓ってくれロスト、憎んでもいい。ただ、ブレシニーだけは護って欲しい。』
彼は誓いを守る。命を捨てても。
「セイラッド、訊いても良いか?」
「何でも、俺の主。」
セイラッドの目には鋭い輝き。生きてきた世界を物語る。
「波紋は、どこまで?」
「どこまで……か。何も見てこなかったのか?それとも、見ようとしなかった?」
彼は見なかったわけじゃない。見ようとしなかったのは事実。
彼は自分の命に執着がない。ただ、知識に貪欲で……
セイラッドは苦笑。
「黙るなよ、俺が悪者か?」
「セイラッド……俺の見たモノは、俺の願い。だろ?」
「……ロスト、願え。せめて、少しの命を……出逢いを否定しないでくれ。」
「願う。ほんの少しの命……彼女のために。」
「舞姫は、お前の恋人か?妻なのか?」
「幼なじみ。ただ、一言でいうなら……命の支え。」
外の見える広い空間に二人で並ぶ。
「この小さな世界。ロスト、何が見える?」
「俺が過去に見た色が見える。常に願ってきたのは幸せ。ほんの少しでも長く……ここで生きることを願う人々。」
「タイドフが揺れる。欲したものを失い、手さぐりの平穏。その失ったと思った安定が……“ここにある”。」
「セイラッド……君なら、どうした?」
「知らないよ。俺は君じゃない。俺は、その答えが欲しいんだ。……匂いがする?不審者だ!」
セイラッドは、腰にある笛で合図を送る。
「ロスト、身を低く!」
【ヒュッ】軽い矢の音。
二人の間を通り抜け、壁に刺さったその矢には、文が付いていた。
『手に入れる』赤黒い血文字
この時、ロストは知っていたのかもしれない。
身近な人間に、裏切り者がいるのだと…………