カスオくん
「誰かいるの? カスオ君?」
そう言いながら脱衣場に入ってきたのはマラオ兄さんだった。
「どうしたんだいカスオ君、電気も点けずに?」
不思議そうに僕を見つめるマラオ兄さんに
「何でもないよ、たま・・・キン・・・ たまにはキンの気持ちになってみようかなと思って」と招きネコのポーズをしておどけてみせた。
マラオ兄さんは疑う様子もなく
「なんだそうなの、でも暗闇だと目を悪くするよ」と言うと僕に背を向け歯を磨きだしたので、すかさず「おやすみ!」とだけ言い残し逃げるように部屋に帰った。

危なかった。
マラオ兄さんで本当に良かった。あれが姉さんならそうはいかない。
「アンタ暗闇で何してんのよ」と徹底的に調べ挙げられる。
自分が納得する為だったら朝までだって取り調べるだろう。
メデューサからの目を覆いたくなるような拷問の末、ポケットの中の秘めモノまで発見される僕を想像しただけで背筋がゾッとした。

マラオ兄さんありがとう、マラオ兄さんで本当に良かった。
「誰か噂でもしてんのかな」と
クシャミをするマラオ兄さんの方に向かって僕は静かに手を合わせた。

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