カスオくん

草原の香り

暗闇の中、慌てて掴み取ったそのパンティはオカメのモノではなく母さんのモノだった。

「殺される・・・」

そう思った瞬間、過去の楽しかった映像が走馬灯のように蘇り、体中の水分が頭上へと突進し毛穴から噴水のように溢れた。貴重な学力を失った上に命まで失ってしまう・・・。

「殺される・・・いや殺されるだけじゃすまない・・・
早くこの場から逃げなくては・・・」そう思っても下半身はナマリのように重く地面に埋まっていた。
魔物と化した永島君は目を閉じ母さんのパンティの臭いをかぎはじめ、辺りの草木を揺らす大きな深呼吸をした次の瞬間、

「ホンモノどぅあ! まさに上等舶来品どぅあ~」と叫んだ。

身体の震えが止まらず祈りの言葉を捧げ命乞いするしかない僕は、何がホンモノで何がニセモノなのか意味が全く分からなかった。
さらに

「草原だ、朝露に濡れた草原の香りどぅあ~」

と唸りを上げる永島に
「アホか! どう考えても草むらの犬のうんこの匂だろ?」
とツッコミたくなるのを必死で堪えた。

いらぬツッコミを入れ正気に戻られるより、時の流れに身を任せこの場をやり過ごそうと必死に祈りを捧げた。
魔物は母さんのパンティを被ってみたり鼻の上に乗せてみたりと色んな角度から存分に楽しみ、疑う様子は全くなかった。
最近父さんに相手にされていないらしく挑発の意味もあるのか母さんのそのモノは年齢のわりには確かに派手だった。
だがその派手さが逆に永島の変態心を満たし僕の命は救われた。

芸と派手な下着は身を助けるとひとつ勉強になった。



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