カスオくん
妖精
御主人様の度重なる催促を絶妙な言い分けでうまくかわしたつもりだったが異変はその日の夜に訪れた。
覗きミッションの攻略など完全に忘れてしまい居間で漫才放送を見ながら笑っていると母さんが「永島君から電話だよ」と呼びにきた。

「ワイセツマンめ、勤務時間外になんの用だ!」と思いながら受話器を取ると
「おいカスオッ、九回のサヨナラ負けと覗きと何の関係があんのかよ!」と半日かけて育児レベルの嘘に気付いたらしく、怒り心頭のご様子だった。

あわてて僕は「秘密の花園と甲子園は兄弟で高校球児の裸体は・・・」と苦しい言い訳を又してもカマシていると

「もう待てん、今から行って勝手に覗いてやるから待ってろ!」

と言い放ち電話を切ってしまった。

「大変だ!!!」

理性を失った変態がこちらに向かってる。
こっちだって策を一生懸命に練っているのに何故大人しく待てないんだろう、
ヤツは忠犬ハチ公の美談を知らないらしい。

「ムチャだ・・・」

倫理に反する問題だ、無修正にモザイク無しのリアルなシーンをリハーサル無しの本番なんて。
しかもこんな時に限ってナイスでグットなタイミングでオカメもお風呂に向かって行こうとしている。
僕は急いでオカメの前に立ち塞がった。

「やめろッ オカメ! 今風呂に入っちゃいかん!」と両手を広げ叫んだ。

「オカメが入るぐらいなら僕が入ってやる!」

と兄としての威厳もって叫んだ。
ビックリしたオカメは意味が分からない様子で僕の顔を見つめていた。

久しぶりにオカメの顔をマジマジと見た。
そして見つめられると何故か胸がときめいてしまった。

いつも一緒に居るので気付かなかったが魅力的な大人の女性へと確実に進化しているのがわかった。
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