カスオくん
決闘の日
必死の思いでなんとか学校に辿り着くと約束の時間を少し回っていた。
僕は落ち着いてもう一度頭の中で勝利の方程式をおさらいし、
呼吸を整え決闘の場所、校庭へ向かった。
校庭にはすでに予想以上に多くのギャラリーが集まっていた。

「しまった・・・ こんなに多くの人が集まってくれるんなら入場券の販売をしとけばよかった・・・」

それにカスオ勝利記念グッズの販売も入れると莫大な利益だったのに・・・ 仕方ない。今回は清く勝利だけを持ち帰ろう。
(どうせこの後CDデビューも控えている事だし)
僕は静かに人ごみを掻き分けて永島のもとに向かった。

「カスオ~ 武蔵きどってんのか~?」

永島のその声にゆっくり顔を見上げると、僕の身体の血は一気に逆流しはじめた。

僕は人生最大のミスを犯してしまっていたのである。

永島は練習や実戦の時はメガネを外し、コンタクトレンズを使用していたのだ。
僕はこの事を知らなかったのかというと、
はっきり言って知っていた。
ただ忘れていただけなのである。

己を知り、そして相手を知るはずだったのが始めから最重要点が抜けていたのである。

永島君の家族構成に好きな食べ物、血液型から御爺ちゃんの俳句の趣味にいたるまで徹底して調べたが戦いには全く意味がなかった。


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