百万人の愛を選ぶか、一人の愛を選ぶか〜ロボットの選択〜

ポールが亡くなって、一ヶ月。カイはずっと暗いまま、ギターを一度も弾くことなく日々を過ごしている。部屋に閉じこもり、食事を摂らない時もある。

このままでは病気になってしまう、と思ったミカエラはカイに話しかけた。

「カイ、ギターを弾いてくれませんか？ずっとライブをしていませんし…。久しぶりに歌いたいです」

「……そんな気分じゃない」

カイはそっけない返事をして、ミカエラの淹れたコーヒーを飲む。

ミカエラは諦めずに話しかけた。

「ポールが言っていました。『辛い時こそ笑うんじゃ。好きなことをして、乗り越えていくんじゃ』と。カイもきっとーーー」

バンッ！という音が部屋に響く。カイが拳をテーブルに叩きつけたのだ。拳を叩きつけた衝撃でテーブルからコップが落ち、コーヒーが床に広がっていく。

カイは肩を震わせ、ミカエラを睨む。その目は怒りと憎しみで満ちていた。

「僕にはもう無理なんだよ！！たった一人しかいない家族を失ったんだ！！お前に何がわかる？プログラムされたこと以外何もできないくせに！！お前を作った人が死んだんだぞ！？そんな時も泣けないのかよ！！この役立たずの中身のない人形が！！」