百万人の愛を選ぶか、一人の愛を選ぶか〜ロボットの選択〜
カイに怒鳴られ、ミカエラは「ごめんなさい」と謝った。

カイは荒い息をしながら家を飛び出していった。

ミカエラは粉々に割れたカップを片付け、こぼれたコーヒーを拭く。

黙々と作業をするミカエラの胸に、まるで棘が刺さったかのような感覚が走った。

「えっ…?これ…は…?」

その棘が何なのか、ミカエラはわからないままだった。



カイは家に帰ってこない日が多くなった。帰って来ても、ミカエラとカイは最低限の会話しか交わさなくなってしまった。

今まで行われてきた路上ライブは、開催されることはなくなった。人々は、それに対して「残念」と口にはしたものの、カイやミカエラに「もう一度してほしい」とは言わなかった。

カイはギターに触れることはなくなり、仕事も音楽とは全く無縁の家具職人となった。

カイとミカエラの心にできた溝が埋まっていったのは、カイに好きな女性ができたことがきっかけだった。

カイが二十歳になったばかりの頃、ミカエラにおどおどしながら訊ねてきた。

「あのさ…女の子ってどんなものをもらったら嬉しい?」
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