百万人の愛を選ぶか、一人の愛を選ぶか〜ロボットの選択〜

普通の会話をするのはとても久しぶりで、ミカエラは驚いたと同時に嬉しくなった。しかし、カイが訊ねた質問が「女性がもらって嬉しいもの」という言葉に、笑顔が崩れていきそうになった。

「もらって嬉しいもの…ですか？」

ミカエラが訊ねると、カイは恥ずかしそうに顔を赤らめ、早口で言った。

「パン屋のサバンナ、知ってるだろ？よくあそこのパン買ってるし。サバンナは何をもらったら嬉しいのかなって……。その…つまり…俺、サバンナのことが好きなんだ！」

ミカエラの胸に、またしても棘が突き刺さる。この感覚が何か、ミカエラはわからない。足元が崩れていくような気がした。

「ミカエラ？」

カイが不思議そうにミカエラの顔を見つめる。ミカエラは慌てて笑った。

「そうですね…。サバンナさんはお花が好きですから、きれいなお花をプレゼントしたらどうでしょうか？」

ミカエラのアドバイスに、カイは目を輝かせた。その目は、ライブをしたいと言ったあの時の表情と同じで、ミカエラの胸にまた棘が刺さる。

「ありがとう、ミカエラ！早速花屋に行ってくるよ。来週がサバンナの誕生日なんだ」

カイは嬉しそうに家を出て行く。あんなカイの表情を見るのは久しぶりで、ミカエラは嬉しいはずだった。