百万人の愛を選ぶか、一人の愛を選ぶか〜ロボットの選択〜
「実はの、ワシがお前を作った理由なんじゃが、ただ家事をさせるために作ったんじゃないんじゃよ」

ポールは暗い表情でうつむく。

「この国の人間はの、みんな青い髪に青い目をしとる。ワシかて今は真っ白な髪に髭じゃが、昔は青い髪をしとった。この国では姿形の違う者は差別にあうことが多いんじゃ」

カイは黒髪に赤い目をしている。姿形の違う者だ。

「ワシの妻が赤い目をしとってな。ワシの息子は母親の目を受け継いだんじゃ。その息子は皆からいじめられ、ひねくれてしまった。そして異国人である黒髪の女性を十六の時に連れてきて、結婚すると言って聞かなかったんじゃよ」

ポールは懐かしそうに目を細める。葛藤がたくさんあったとしても、懐かしい思い出として胸に残っているのだろう。

「この家は街から離れておるじゃろ?ここはワシが結婚した時に建てたんじゃ。ワシの妻も、皆から差別を受けておったからの。この家でワシと妻と息子とその女性と一緒に暮らしとった」

しかし、カイが生まれてすぐにポールの妻は病気で亡くなり、カイの両親も事故で亡くなってしまったそうだ。

「カイはいつも明るく振舞っておるが、街ではいじめられておる。カイを守ってほしいんじゃ。そのための機能がお前にはついておる」

ポールがミカエラの背後に回り、うなじの部分に手を当てる。するとミカエラの頭の中にある指令が下った。

「…わかりました。それでは、行ってきます」

ミカエラは素早く洗濯物を干し、カイのもとへと向かった。



森の中を通り、ミカエラは初めて街へとやって来た。この国の地図は頭の中に記憶されているので、迷子になることはない。

この時間帯、カイがどこにいるのかミカエラは知っている。街中にある小さな学校だ。
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