未知の世界6
『どうだった?外科研修は?』
少し前を歩く進藤先生が、軽く後ろを見ながら尋ねる。
「思っていた以上にキツかったです。」
『そうだよね〜。オペって長いしね。ずっと立ってるし。』
そう。長いオペで10時間近くはかかったものもある。
麻酔で寝ているとはいえ、何時間もお腹を開けっ放しの患者さんは、本当にすごいと思う。
執刀医と助手はもっとすごい。
ずっと集中していなきゃならない。そして細かい作業ばかり。本当に体力勝負だった。
それなのに私ときたら……。
「体力もなく挑んだ研修だったので……ただ立っているだけで精一杯でした。」
思い出すだけでも落ち込む。
『まぁ、そんなもんじゃないの。最初は。かなちゃんは、体力ないのに最後まで付き合えれてすごいよ。男でも途中で倒れる人だっているんだし。
それに、かなちゃん集中力は半端ないって、ジュニアが言ってたよ。』
ジュニア、早川先生の弟である、たける。
いつの間に進藤先生と内通するようになったのだろうか。
たぶん、私の研修中の様子はたけるが流していたんだと思う。いや、間違いないな。
『なら、尚更。今日はしんどいだろうねぇ。』
何だかとても楽しそうな顔。
私の苦しむ姿を想像して喜ぶ進藤先生は、鬼だ……。