未知の世界6
数分で終わる吸入だけど、私には地獄の時間。終わってからも肩で息をしてしまうほど。
何ら研修前と変わらない、いや……むしろ、いや……もちろん、酷くなっている。そんなことは承知の上。
『かなちゃん…当然という顔してるけどね、この状態ではダメだからね。
次は第二やごな病院での研修が待ってて、その次は海外に行くんだよ。』
さっきまでふざけていた進藤先生は、もうどこにもいない。
真面目な顔で真面目な話しかしていない。
『幸治くんに、あれだけ頼んでおいたのにな。家での吸入。』
そうです……。幸治さんが簡易吸入器を家に持ってきて、私の帰りを待っていたけど、私はあまりにも遅くて。
結局、ほとんどやれませんでした……。
「ごめんなさい。」
『はぁ、謝らなくていいから。これから毎日頑張ろうね。
それから、今週中に検診ね。』
「うぅ……はい。」
仕事を休まなきゃ検診は受けられないから、しばらくはやりたくなかった検診だけど、ここまできたら断れない。
はぁ……医局に戻って、医局長に相談するかな。