未知の世界6
宿の仲居さんに教えてもらった食事処でお昼を済ませ、温泉街の足湯に浸かって、お土産も買って、食べ歩きもして戻ってくると、宿の調理場からは美味しい匂いが廊下に流れていた。
「あんなに食べたのに、もうお腹空いてきちゃった。」
『いや、そんなに食ってないだろ。』
「そんなことないですよ。お昼ご飯食べて、その後に食べてますからね。
普段は」
『そうだな。仕事中は食べ流すときもあるし、食堂で薬飲んで終わることもなっ。』
うぅ…私の言葉を遮ってまで言わなくても……。
『まぁ、その普段からしたら、食べてる方だろうな。』
「は、はい!」
『体力付いたんじゃないか?』
「えっ!?」
そうかな、特に運動はしてないけど。
『外科研修で鍛えられたんだろうな。
だから腹も減るんだろう。』
と言われながら、気づいたら私の横腹にある幸治さんの手が動く。
『少しだけ、肉が付いたな。』
「そんな、太ったかな……」
『いや……むしろもっと太った方がいいからな。』
そうかな……。
『その方が掴みやすい。』
ん?それはもしかして……アレの最中に……
と幸治さんをチラッと見ると。
『変なこと考えてたろ。』
うわっ!
自分から振っておいて…恥ずかしい。
顔が赤くなってる気がする。
恥ずかしくて下を向いた。
『夜も寝かせないほどやりたいけど、今日は無理させられないな。』
サラッと宿の廊下ですごいワードを口にする幸治さんは、私の肩を抱き寄せて歩いた。
いつも怒られてばかりだけど、こんな幸治さんの姿や言葉一つ一つに温かみを感じる上に、とても幸せな気分になる。