未知の世界6
オペ室から戻って来ると、岡本先生の言ったとおり5時前だった。
机の上に資料を置いただけで、椅子に座る前に岡本先生から再び椎名先生のところへ行くよう言われ、たけるにこえをかけてから、呼吸器内科に向かった。
呼吸器内科……ぇっと、どこだっけな。
掲示板で2階にあることがわかり、エレベーターで向かう。
椎名先生……一体どんな人だろうか…
初めての先生にはとても抵抗がある。
普段、たくさんの先生方と一緒に仕事をしているものの、自分の体を診てもらうとなると、とても構えてしまう。
過去に何人もの先生が私の主治医になってきたけど、その先生方も最近では変わることなく同じ方ばかりなので、今回は不安が募る。
体の傷や跡、きっと驚かれるに違いない。心臓の音も聞かれるのかな…。
私の大切な心臓。
トクン
胸に手を当てて問いかけると、答えるように帰ってくる。
大事な大事な心臓。この心臓の持ち主が生きられなかった分を、私がたくさん生きなくちゃいけない。
だけど、どうしても胸の内を聞かれているようで、聴診は今でも気が進まない。
どんな患者さんでも、女性は特に自分の胸を見せるなんて、嫌で仕方ないと思う。相手が医者であっても、いい気はしない。
そんなことを考えながら2階の呼吸器内科に着いた。
部屋の前で、深呼吸……
「スーーー
ハーーーーーー。」
落ち着かせてから、部屋に足を踏み入れた。