未知の世界6

「失礼します。」




控えめにソッと入ると、診察室が三部屋と処置室に分かれている。
たぶん処置室かな、と向かうと誰もいない。処置室の奥に看護師さんや先生がいるような部屋があるんだろうけど…勝手に入っていいものか……
私は医者だけど、やごな病院の人間だし。
そして患者でもあって、ここに来ている。
うーん、どうしたらいいのかな……





なんて考えていると、





『あ、幸治の?』





と突然後ろから声がして、振り返ると、メガネをかけた先生が処置室に入ってきた。





「は、はい。佐藤かなです。」





『幸治からは聞いてるよ。



僕は、椎名武。幸治とは大学からの付き合いなんだ。よろしく。』





見た目穏やかな空気をまとう先生に、少しホッとした。





「こちらこそよろしくお願いします。」






それでもカチカチになった私は頭を下げる。





『さっそく吸入を始めたいんだけど、その前に…。』






そういうと隅にあるカーテーションの方に椎名先生が近づく。




『診察するからこっち来て。』





あ……やっぱり、診察か。





予想していたけど、お会いして始めていきなりの診察に、緊張が高まりカチコチになりながらカーテーションへ。





『中の丸椅子に座ってて。』





そう言われて椎名先生は中の部屋に入って行った。




はあ、ドキドキする。
吸入だけでいいのに……。
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