未知の世界6
ノートパソコンを机に持ってきて、カルテを開いて用意できたのか、聴診器を首に掛けた先生は丸椅子を回してこちらを見た。
『最近の状態については、第一の進藤先生からも幸治からも聞いてるから。
それじゃあ聴診するから、服上げて。』
私の同意は一切求めず…事を進めていく椎名先生。
『ん?服上げて。』
ボーっとしてたのかと思われたのか、早くしろと言わんばかりで私を見る。
こういう時は患者の気持ちを汲み取って、確認しながら進めるもの……って、そんなこと言えるはずもないので、仕方なく服をまくる。
さらに椅子を前にして私に近づけば、私の背中に片手を回し、後ろから抑えるように聴診をする。
そして一箇所ずつ丁寧に診ている。
言葉や態度の割に丁寧な診察。この診察方法……知ってる。
どのくらい経ったのか、研修の方が気になって仕方ないけど、担当医でもないのに診てもらっていて申し訳ない気持ちもあるので、時間のことは言えない。
早く、終わらないかな……。
『はい、いいよ。
肺は、綺麗な音とは言えないけど。普段からこういう音だってことは聞いてるから。
心臓は、かなり速めなんだね。息切れなんかがあったら、僕でもいいから言うように。
それから、はい、これ。』
診断結果をツカツカ説明されて、私はすっかり置いていかれた気分。
そして手渡されたものは、喘息の検査キット一式。
まぁ、しょうがないか……。
と渡されたキットを自分で開けて一つ一つおこなっていく。
はぁ、まだ吸入しないなのかな……。
長過ぎる。
『じゃあ、これでカルテ作っておくから。』
「えっ!?カルテですか?」
吸入だけを頼んであったはずでは。カルテまでいるのか…な。
『大丈夫だ。治療費は同じ系列の病院の職員なんだなら、割引は変わらないし。』
いや……そういうことではないのですが。
これ以上のことを言うと初日から怒られそうで、黙っておいた。