未知の世界6
『しっかし、お二人はとても熱心ねー。』
古巣の看護師が器具の最終チェックを行いながら、私とたけるを見て言ってくる。
「……何がですか?」
たけるが取り敢えず聞き返しておこうと、質問する。
『器具の準備を手伝いに来た人なんて……滅多にいないわよー。
あ……昔に一人いたかな……。
それもあなたたちと一緒の小児科の先生だけどねっ。』
再びニタニタっと笑いだす。
この流れだと…誰なのか聞き返した方がいいのか、私たちの返事を待っている。
たけるが私を見て、聞くように目で促す。
『ぇっと…小児科のどなたですか?』
一応聞いてみる。
『それはもう、あなたの一番知ってる人っ。』
そうきてすぐに理解した。それでニタニタしているのか…。
私が一番知ってる人と来たら、幸治さんしかいない。
『あなたたちが夫婦だなんて、全く知らなかったわぁ。いつからの付き合いなの?』
ズカズカと聞いてくる古巣の看護師を、邪険に扱うこともできず。
「うぅん、何年も前から…。」
間違ってはいないだろうし。私が知らないだけで、幸治さんは私の幼い頃から知っていた。
付き合うと言うか知り合ったのは、その頃だから、間違いはない。
しかし、普段オペを一緒にしている幸治さんは、この方達とはあまり話さないのか。話す機会がないのか。話す必要がないのか。
きっと一番最後が答えなんだろうけど、私たちが夫婦であることは一般病棟や外来の看護師たちは周知されている。
オペ看のこの方達は、幸治さんを知っていても私を知らないからか、夫婦だと知ってとても嬉しそうな顔をしている。
いまいち分からないけど、少しの辛抱。
今はまだ研修の身だから、何も言えない。いや…きっと私たちはこのオペ看二人にはこの先も頼っていくことになるだろうし、絶対に敵に回してはいけない相手なんだろう。
そうやって、オペの準備は終わってしばらくすると、今日の患者がやってきた。