未知の世界6
『いただきます。』
三人で囲む食卓に並べられたのは、私の好きなお店のお弁当。
心臓に負担のない低カロリーな健康的なおかずばかりのこのお弁当は、私の大好物。
お昼はゼリーしか食べてないので、今日はたくさん食べらるっと意気込んだものの……。
「…………うぷ。」
開始早々、空腹で勢いよく口に入れたおかず。
半分いったところで……箸が止まり……胃から込み上げる。
『食欲、ない?
っと言っても結構食べれたね。』
そう、私にしては結構食べた方。
「お腹空いてたので、最初は食べれたんですけど……ね。」
私の胃は、昔に比べて小さくなったのか……やっぱり食べられない。
『まぁ、無理しないで。薬はちゃんと飲もうね。』
「はい……。」
珍しく優しい言葉に、胸が若干熱くなる。
『研修中の食欲は?』
食べられないお弁当を幸治さんに食べてもらおうと、手渡ししていると、進藤先生から聞かれた。
「緊張しっぱなしなので……正直、お腹が、空かないです。」
『そうだよねー。僕もオペの時は緊張してて。終わってからも食欲なくて、あの当時は体重減ってたなぁ。』
え?進藤先生もオペ?
「先生も外科にみえたんですか?」
『あぁ、専門としてるのは呼吸器内科と小児科だけど、昔は外科の医者も少なくて、同じようにオペ室に入って執刀してたんだよ。』
すごい……何でもできるんだな。
いつもの進藤先生からは患者よりも病気を診るスーパードクターよりも丁寧、患者に密着ドクターみたいな感じなのに。
スーパードクターでもあったんだね。
『かなちゃん、分かりやすい。
すごいキラキラした目で見てる。』
「あ、いや。
いつもすごい方とは思っていたんですけど、またさらに……」
『そうだよ。そんなすごい僕にしっかり診てもらってるのに、色々問題起こすんだもんなぁ。』
ハハと笑った進藤先生に、何も言えず顔が赤くなった。
三人が食事を終えて、進藤先生と幸治さんがビールを開け始め、私はダイニングでお茶を飲む。
二人がテレビをつけて、色々な話をしている。
いつもなら怒られてばかりだけど、今日は違ってとても穏やかな時間。
幸せな暖かい時間を眺めながら、ウトウトし始めた…。
眠い……
そのまま机に突っ伏して眠ってしまった。