未知の世界6
『かなちゃん、どうだい?研修の方は。大変だろ?』
食事が始まり、一杯目のビールを飲み干したお父さん。
「はい、でも知らないことばかりで勉強になります。」
『ハハハ、だろ?
研修受けるの辞めるって言い出すかなちゃんに、ちゃんと進めといて良かった。』
そんなことあったな……
と思うと恥ずかしくなる。
『どうして辞めようと思ったの?』
すかさず椎名先生が聞いてくる。
「その頃、体調があまり良くなくて…研修を受けても続けられそうになくて。」
『今より悪いってことか?そんな時がありながらも仕事をしてるなんて、見た目からじゃ考えられない強靭な精神力を持ってるんだな。』
驚いた顔の椎名先生に、さらに驚いた顔のお父さん。
『えっ?えっ?かなちゃん、調子悪いのか!?』
とボリューム高めのお父さん。
「い、いや…いつもと変わらないんですけどね。ハハ」
苦笑することしかできない。
『椎名の中ではかなの状態が悪いと思ってるけど、まあいつも通り喘鳴が聞こえるくらいで、大して悪くない。』
すかさず幸治さんのフォローが入る。
『そうかそうか、でも心配だな。無理しないようにね。』
「はい。」
と返事をして私の話は終わると、仕事の話をしたり昔の椎名先生と幸治さんの話をしたりと……聞いてても楽しい会話が繰り広げられた。
食器が空いてきた頃、片付けようとお皿を手にすると、
『かなちゃんっ!いいのいいの。明日も早いから、今日はゆっくり休んで。』
お母さんにしっかり止められる。
「いえ、これだけでも」
とお皿を運ぼうとするけど、幸治さんにガッチリ止められる。
『疲れてるだろう?今日は早く風呂に入って寝ろ。』
そう言われては……と持っていたお皿を置いてお母さんに後をお願いして、お風呂に向かった。