未知の世界6
それから私だけ先に寝室へ行き、ベッドに入るとすぐに、眠りについた。
〜その頃リビングでは
『かなちゃんはどうだい?そっちでうまくやってるかい?』
『ええ、小児外科の岡本先生からは、みんなから親しまれてるみたいで。第一からの研修の身ですけど、細やかな気遣いもできるし、真面目で努力家だと好評価ですよ。』
『そうかそうか。』
『真面目がゆえに、心配ですけどね。
研修に集中したら、周りのことには気遣えるけど、自分のことは全く見てない気がするような…。』
『なんかあったのか?』
幸治が口を挟む。
『いや、特にないけど。
薬もちゃんと飲んでるみたいだし、俺なところにも忘れずにちゃんと来るけど。研修するためにやってる感じがするんだよな……。その、治療の一環ではなくて。研修が終わるための応急処置ではないけど。』
『……そういうことな。
かなのことなら、ありえるな……。』
『だけどかなちゃんは、そんなつもりじゃないと思うわ。周りからそう見えてしまうだけだと思うけどな。』
と片付けをしながら、お母さん。
『いやぁ、かなちゃん…持病と仕事を天秤にかけると、仕事に重きを置いてるからな。
研修はどんな感じなんだろうか。
やっぱり、スケジュールなんてあってないようなもんだろ?』
心配になるお父さん。
『そうですね。何時間もオペ室にこもって、出てきてもすぐに食事や休憩が取れるわけでもないので。
また真面目がゆえに、昼休憩も自分から言わないで、だれかが声をかけないとずっと仕事してるみたいなんです。
その点は前回の研修で岡本先生が気づいてたので、今でも岡本先生から声かけて必ず休憩をとらせるみたいですけど。
食事して、まっすぐ帰って来るから休憩にはなってないんじゃないかって。』
『あいつはいつもそうだからな。
入院中さぼることは得意なんだけど、仕事となるとな……。』
『それよりも、あと食事量は何とかならないのか!?』
思い出して驚いた顔の椎名先生。
『子供用のうどん一杯だけで、お腹いっぱい、もう無理ー!って』
『はぁ……やっぱり食べてないんだな。
緊張したり、忙しくなるとお腹が空かないとか言って、体重が落ちていくんだよなぁ。
前はまだ肉付きも良かったのに。』
『そうね、かなちゃんはここ数年で激やせしたわよね。』
『体力付けて行って欲しいんだけどな……。』
お父さんがポツリと呟いた。