未知の世界6

トントン



次に入ってきたのはお父さんと椎名先生。





『かなちゃん、寝てるところごめんね。少し胸の音を聞かせてね。』






いつものように部屋に入ってくると、慣れた手つきで私のパジャマを開けていく。






まだぐるぐるしている目をぎゅっと閉じる。






『今、どんな感じ?』





聴診しようとしたお父さんが手を止めて私の手を握る。





「目が……回って。」






『気持ち悪いかな?吐きそう?』





「気持ち悪いけど…吐くまでは。」





『うん、分かったよ。そしたら、吐きそうになったら教えてね。』





そういうと再び聴診を始めた。













いつもの長さで……。





途中、お父さんが椎名先生に胸と肺の音を聞かせる。





目を見開いた椎名先生の顔からは、信じられないという表情。





たぶん、日頃の私の肺の音がひどいと思ってるから、今の私は信じられないんだと思う……。






少しずつ目眩が治ってきたころ、幸治さんから氷枕を敷いてもらう。






「……ごめんなさい。こんな時に。」





つくづく思う、自分の身体は人に迷惑ばかりかけてるって……。





ダメだな……私。





『大丈夫だ。むしろみんながいた時で良かったな。』





お父さんも椎名先生も、幸治さんも…優しい顔をしてくれてるけど、私を気遣ってだろう。






『熱はあるけど、明日ゆっくり休めば回復するから。』





お父さんが私の手を握る。





ありがとう……お父さん。







『じゃあ、俺たちは向こうにいるから、今はしっかり寝るんだぞ。』





そう言いながら、頭上にかけられた点滴の速さを調節している幸治さん。





いつの間に、こんなものを……。





『あぁ、これ?
進藤先生から預かってたんだ。
調子が良くなかったら処方してって。』





……そういうことか。





進藤先生は、昨日の私を心配してくれてたんだろう…。





明日はお休みか……。





休まず行きたかったのにな。





早く治って……。





再び目を閉じると、眠りにつくのに時間はかからなかった。
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