未知の世界6
次に目が覚めると、カーテンから外の光が漏れていて、朝を迎えたことが分かった。
隣に幸治さんもいなければ、腕の点滴もない。
全く気づかないうちに外されてた。
体はすっかり軽くなって、起き上がっても目眩も怠さもない。
ゆっくり起きて、リビングに向かう。
ガチャ
部屋を開けると昨日と変わらないメンバーがそれぞれの場所で、私を振り返る。
『あ、かなちゃん、おはよう。
起き上がって大丈夫かしら?』
お母さんが一番に駆け寄ってくれた。
「はい、もうすっかり。
えっと…あの今日はみなさん、お仕事は……」
『休みだよ。だからみんなで泊まったんだ。』
とお父さんがソファに座るようにと招く。
『そうそう、病院に行っても俺が休みだから、朝からここで診ておこうと思ってたんだ。』
そ、そういうこと。
「色々とすいません……。」
招かれたお父さんの方へ行くと、隣に座らされ、大きな手が額を包む。
背中もしっかり手を当てられ、身体中の体温を感じて診断してるんだと思う。
『あら、回復早いね。
でも、今日は一日ゆっくりするんだよ。』
「はい。」
『病院には連絡しといたから。』
と幸治さん。
「あ、すいません。すっかり忘れてた。」
『たけるにもメールしといたから。』
「ありがとうございます。」
すっかり愛弟子となったたけるは、幸治さんの内通者だということを改めて思い出した。
『さあ、かなちゃん。朝ごはんにお雑炊作ったから。』
あ、朝ごはん……。
つい固まってしまう私に
『こういう時こそ食べないと、また今夜にでも熱が出るわよ。』
といつも間違ったことを言わないお母さん。お母さんが言うことは絶対というほど当たっていて…前にもこうしないとこうなるわよ……と言われたことをそうしなかったがために、酷いことになったことを思い出した。
その話は幸治さんとお父さんも知らないことなんだけど……。
「た、食べます。」
キッチンのテーブルに腰掛け、お母さんに出してもらったお雑炊を口に入れる。
お、美味しい。
いつもお母さんの手料理は美味しすぎて、普段食べられない量を食べてしまう。
『どうかしら?』
「ものすごく美味しいです。」
お雑炊をお茶碗に軽く二杯食べたところでやめておいた。
軽く二杯でもここ最近の朝食では、一番食べた気がする。
そんなことは私と幸治さんしか知らない。チラッと見ると、幸治さんもチラッと見た後だったのか、目線が私の方からテレビにうつる。
『よく食べてくれたわね。ありがとう。』
「ご馳走様でした。」
さあ、このお腹ですぐに薬が飲めるか……。
いつもの場所に置かれた薬箱をお母さんが持ってくる。
そう、この薬箱は私がちゃんと薬を飲んでるのか、幸治さんがチェックするためのもの。
前に飲みきれず捨てていたことがわかって……大変怒られたことがある。
一回分が仕切りで別れている。
朝は一日のうちで一番量が多くて、この一回分プラス、一日一回朝に飲む薬はまた別にある。
夜の寝る前に飲む薬もあるけど、とりあえず今は朝。
机にそれらを並べて全てあるか確認する。
「はぁ」
その量の、多さと今の満腹状態に、どこに入る余地があるのだろうと考えてしまう。
お母さんからコップに入った水を渡される。
薬を飲みやすく形ごとに分けて……口に放り投げ、水を飲み込む。
それを三回やったところで薬はなくなり、机に突っ伏した。
はぁ、苦しい……。
『今日は部屋で寝てろよ。』
そんなことを見られていたのか、幸治さんにすかさず声を掛けられる。
「はい……。」
『後のことはやっておくわ。またお昼に起きてれたら、ご飯食べにおいで。』
「すいません、お母さん。ありがとうございます。」
そうお礼を言って、リビングを出て私は寝室な向かった。