未知の世界6
担当医
次に眼を覚ますと……
「病院……。」
家にいたよりも幾分か体が軽くなっているのは、たぶん点滴のせいかな。
はぁ、結局研修は最後まで続けられなかった。
このまま研修も終わってしまう気がする。
一度入院すると、回復まで時間もかかるし、心臓や肺の検査結果を待つのに時間もかかる。
通院中にはできないような検査もするだろうし。
こんな体で海外に飛び立つなんて、無理そう……。それまでには治るといいけど。
もし行けなかったら、そのまま行きたくないな。たけるがいない飛行機なんて怖くて仕方ない。
飛行機以外にもいろんなことの手続きをたける任せにしてきたせいで、次もたけるは欠かせない存在になりそう…………。
体が良くなってきたせいか、今後のことが頭をよぎってしまう。
いつ退院できるのか……。
はぁ、私の悪いくせなのかな。退院のことばかり考えちゃうのって…。
モヤモヤした頭で過ごしていると、誰かが話しながら部屋に近づいてくるのが分かった。
トントン
『かな、入るぞ』
幸治さんの声……
ガラッ
と開いた扉。
幸治さんの声でさっきまで一緒にいたお父さんかな…って思っていると。
お父さん、幸治さん、椎名先生。
そこまではまだしも……。
進藤先生、石川先生、それから…岡本先生まで一緒に。
いやいや、よくある大学病院の院長回診でもないんだから……。
さすがに大勢の白衣着たメンバーがズラズラと歩いてきたら、誰が入院してるんだろうって、ザワザワしちゃうでしょうが……。
個室だからいいものの、大部屋なら入りきらないよね…。
『なんか気分悪そうな顔だな。』
気分悪いんじゃなくて、この状態が恐ろしいんだよ。
『かなちゃん、どう?よくなってきたかな?』
とお父さんの返事に、はいと答える。
『みんな心配で…椎名くんも休みなのに病院まで来てくれて。岡本先生も仕事を早く終わらせて来てくれたんだ。』
「……岡本先生、椎名先生、ありがとうございます。ご迷惑をおかけしてすいません。」
『ううん、大丈夫だよ。
あれだけ頑張ってくれたんだから、少し早いけどゆっくり休んだらいいんだからね。』
と岡本先生。
『早く治せよ。』
いつも長く説教じみた話ばかりする椎名先生は、言葉少なめ。
『かなちゃん、よく頑張ったね。少し休憩だね。』
と進藤先生。
「はい……、いつもすいません。」
『まぁ、すぐ復活するだろ。』
いつも簡単には復活しないと知ってるのに、元気付けようと言葉をかけてくれる石川先生。
「はい。」
『みんな、かなちゃんのことを応援してるからね。しっかり治して、また一緒に仕事しようね。』
とお父さんの言葉に「はい」と頷くことしかできない。
そんな大勢のベテランドクターに囲まれて、先生方に研修中や日頃の私の話を勝手に話され、30分くらいしたところで、みんな帰って行った。
みんな、わざわざ来てくれるなんてとても嬉しい……。
でも、もしかしたら研修を続けられなかったから私が相当落ち込んでると思って、来てくれたのかもしれない。
確かに落ち込んでるけど……。
ところで今回は肺だけ、それとも心臓も弱ってるのかな?
誰も話してくれなかったけど、実はそれが一番肝心なんだよね。