未知の世界6

『かな!起きろ。』





家にいるような気分で目を覚ますと、幸治さんが怒った顔で立っていた。





最近の幸治さんは、穏やかで優しかったのに…私が入院した途端に。
いつも入院したり体調崩すと、怒っている気がする。





『起きてご飯食べて、薬飲まなきゃダメだろ。』






一日寝ていたおかげで、頭がボーとしてしまう。
数日前まで何時間ものオペに立ち会っていたとは思えないほど、酷く眠い。






『ほら…』





リクライニングを上げられて、スプーンを持たされる。





食欲なし……。





ガッツリ盛られたごはんにおかず。





寝起きでこれはつらいな。






『聞いたぞ、今日はいきなりやらかしたみたいだな。』






やらかしたって……






『親父を困らすなよ。』





困らせてるつもりはないんだけどな。






「……ごめんなさい。」





なんだか謝るのが癖になってしまった気がする。早く謝れば、それ以上相手を怒らせない気もするし。





『別に謝られても。』





「だって、幸治さん怒ってるし。」





『怒ってないよ。』





いや、言い方も表情も怒ってるよ。





『とりあえず食べろ。食べなきゃ薬も飲めないし。』





「はい……。」













それから何とかして半分を食べ終えた時には、係りの人が食事を回収に来ていた。






『早く食べないからだぞ。』






「ごめんなさい。」







『いいから、薬飲んで。』






そう言われて薬を何度かに分けて飲んだところで、幸治さんは帰って行った。






何をそんなに怒ってるのかな。お父さんに何か言われたのかな。






「ゲボッ」






あれ、おかしいな。







「ゲホッゲボ。ゲホッゲボ。ゲホッゲボ。」






今までなかったのに、咳が出始めてしまった。
ここ最近、吸入は毎日してるし、薬も忘れてない。
それなのに、突然……咳が出始めた。






「ゲホゲホゲホゲホゲホっ!」







と大きく咳き込んで、深呼吸すると、治っていた。






なんだ、喘息の咳発作ではなさそう。






と安心するけど、一日寝てしまったので、全く眠れそうになかった。







これから消灯なのにな。






咳が出たせいで喉が渇いてしまい、いつもの自販機に行く。






早く帰らないと誰かに見つかったら、何か言われるのも嫌だと思い、足早に部屋に戻った。








「ゲホッゲボ。ゲホッゲボ。」







咳はまた出始めたものの、水を飲んで落ち着いた。
















日付が変わった頃、目を瞑っているものの、なかなか眠れない。





何度も看護師さんが巡回にやってくるけど、その度に目を瞑って寝たふりをしてみる。






いつも眠れてるから知らなかったけど、巡回ってこんなに多いものなのかな。






なんて考えていると、






「ゲホッゲボ、ゲホッゲボ。」






喉が渇いたのか咳がで始めた。





「ゴボゴボゴボゴボ……。」




廊下に聞こえないように、布団を被ってなんとかやり過ごす。






うん……きっと大丈夫。






もう一度水を飲んで、ベッドに横になった。





それでも眠れず……結局眠りについたのは午前3時頃……。
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