未知の世界6
束の間の休息
『「研修、おつかれ〜!!!」』
かんぱ〜い!と口々に言いながら3人での宴が始まったのは、終業時間から三時間が経った頃。遅くから始まった。
『かな〜おちゅかれはま〜。』
まだ生ビールを一口しか飲んでいないまいは、飲む前から酔い始めていたんじゃないかと思うくらいのヨレヨレの口調。
きっとまいも遅くまで仕事をしていて、疲れてるんだと思う。
『次は第二やごな病院での研修を少しやって……アメリカか…。』
盛り上がり始めた宴は、たけるのその一言でシーンとなった。
『えっ!?あ、ごめん。』
まいも私も何も発しないでいると、たけるはその空気に気づいたのか、焦っている。
まいはたけるがアメリカに行くことが、寂しくてしかながないようで。
そのことは禁句になったいた。
もちろん私も不安……。幸治さんと離れることよりも、あっちの病院についていけるのかという不安。
口にするとさらに不安になってくるので、あまり誰かに話すこともないんだけど……そろそろ考えていかなくちゃいけないのに。
『ううん……それはたけるにとって、とても貴重な経験だってことは充分知ってるから。だから、頑張ってきてね。』
といつの間にか酔いが覚めたのか、口調ははっきりとしているまい。
『ありがとう。僕もまいと離れるのは寂しいし、向こうで務まるのか不安だらけ……。
前の大学での研修とは全然違うだろうし。』
たけるでも不安だなんて……私が行ってもいいのかな……。
さらに不安になってしまったところで、
『うん!やめよう。この話っ!
寂しくなるのも不安になるのも、それを言ったら余計に不安になるだけだし。
決まったことなんだから、もう行くまでの準備をしっかりするだけ!』
と私も気合いを入れられ、その話はしないことにした。
でも結局そのあと話題になるのは、仕事の話で。それでも大盛り上がりして、宴は四時間にもわたって終わりを遂げた。